文学の秋2-3 最後
概要
その言葉に少し怖くなり、行くのをやめてまた座った。
ふと、懐かしい雰囲気に包まれた。以前にも一度、この景色を見たことがあるような気がした。
「あたし、ここへ来たことがあるかもしれない。」
「気づいたかい。」
「え?」驚いて思わず聞き返してしまった。
「お婆さん、何か知ってるんですか?」
「ここは、過去と現在(いま)を繋ぐ場所なんだよ。
でも、未来へは行けない。
過去へ戻り、現在(いま)へ帰るだけの場所。」
その言葉を聞いた私は、何かを思い出しそうになった。
子供の泣き声が聞えてきた。
子供が、独りぼっちになって泣いていた。
お婆さんは「おいで」と子供を呼ぶと、より一層優しく微笑み、子供を撫でながら
「そして私の今と、お前さんの未来
お前さんの今と、この子の未来は別のもの。
同じ未来はない。
けど私は、どうしてもここへ来たかった。」
私は初め、その言葉が良く分からなかった。
お婆さんはそのまま続けた。
「私の最後の願いは叶ったようだよ。」
「目を閉じてごらん。」
「見ることはできないけど、描いていくことはできるんだよ。」
ハッとし、お婆さんの方へ振り向いた。
お婆さんと子供がいなくなっていた。
気づくとバス停ではなく、道の脇に堂々と立っている大木の、太い根の上に座っていた。
樹齢数百年はあろうかという、大きな大きな木だ。
その木の横に、季節外れな一輪の向日葵が咲いていた。
真っ赤に染まった夕日が、山の輪郭を撫でている。
道の遠くの方に、見覚えのある古びた駅が見える。
あることに気づき、すっきりとした気持ちで私は、力強く歩き出した。
キラキラと輝く夕焼けが、切ない秋桜の僅かな香りが街へと運ばれていた。
-おわり-
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過去へは帰れるが、未来へは行けない場所。
すごく身近に存在しています。
by YuKiNKO
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